美味しい店もたくさんあるし、自分の中のお気に入りの店や落ち着ける店、ここぞという時の勝負店も段々できてきた。ふと入った店が凄く美味しかったり、サービスが良くて嬉しくなる時もある。
しかし、それと同時にまずい店とか接客が酷い店も当然ながら結構あったりする。そんな店に入った時、怒りや悲しみを覚えると同時に、妙な、良い店を発見した時に感じる興奮と同じ興奮を覚えたりする。
昔、融点というオシャレファンクバンドをやってた時に、ギター兼リーダーの庄子スメル薫に「凄い不味くて酷い店見つけたから飲みに行こうぜ!」とお誘いを受けた。

スメル薫
「え…どうせなら美味しい店に連れてって下さい!」と不満を訴えたが、庄子さんは「とにかく最高だから!」と言って結局連れて行かれた。
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京都駅の近く、七条新町にいかにも昭和な小さな飲食街の路地がある(名前は伏せます)。その中のとある小さな小料理屋が、その店だった。
「ここだから。めっちゃおもろいから」と庄子さんは自信満々で引き戸を開けた。
中では淡谷のり子にファズがかかった様なけばけばしいおばあちゃんが一人で店を切り盛りしていた。「お兄さん!久しぶりやねえ!」と言って、我々を迎え入れた。
ドキドキしながら瓶ビールを注文し、「どんなものが出るのかな…」と思っていたら、しばらくしてから、カチカチに焼かれたオムレツと焦げてるウインナーが2,3本、俺と庄子さんの分が別々の皿に盛られて出てきた。
「…朝…飯…?」
と呆然とする俺と既に笑みがこぼれちゃってる庄子さん。
実際食べてみると「なんだこりゃ!まず!」という程のものではないが、面白くも何ともない普通の(よりちょっと不味い)オムレツとウインナーだった。
おばあちゃんはその後「アタシ、最近知ったんやけどねえ。最近こんな便利なモンが売ってるんやねえ。アタシ知らんかってねえ。今したげるからあんた達若いからまだ食べれるやろし食べ」
と言って「サトウのごはん」を2パック出してきた。

誰もが知ってるサトウのごはん
それを(頼んでないのに)チンしている間、庄子さんは既にブチ上がっていて「な?酷いやろ?な?」とヒソヒソ声で聞いてくる。
なんの変哲もないサトウのごはんを食べ、「美味しいやろ?便利やわぁ、便利やわぁ」と言うおばあちゃんに「や、やっぱ白いご飯ですよね」などと気を使う内に日は暮れた。
その店にはカラオケがあり、勿論歌う事もできる。この店では900点以上出せばカウンターの上に飾られている汚い黒板に名前が記念に刻まれ、讃えられる、というシステムが取られている。「今まで長いこと店やってきたけど900点以上は3,4人くらい」とおばあちゃんが言うように、黒板には3,4人の名前が書かれていた。
「おまえもせっかくやから唄えよ」と勧められ、せっかくなので歌ったら、見事に900点を叩きだしてしまった。
今でも、「いわはし」の名がその店の黒板に力なく残っている事を想像しただけでも、力が抜ける思いである。
そして、お会計の際、伝票にしっかりサトウのごはんが2で付いていたことを見逃さなかった。高かった。
あのお店、今でもまだあるんかなあ。あるならちょっと行ってみたい。結局、庄子さんは後日一人でその店に行って、おばあちゃんが外国人のお客さんが日本語が分からないのをいいことに、ぼりまくっていたのを見兼ねて、注意して喧嘩になってから行ってないらしい。
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今日、昼間に行った蕎麦屋が絶望的に不味くて、ちょっとそんな事を思い出し、「庄子さん…なんとなく気持ちわかりましたよ」という、誰かを連れていきたい気分になったのだった。しかし不味かったなー。
ちなみに良い店での最近のお薦めはメトロの近所にある缶詰バー。

安いし、美味しいし、色々あって面白いです。



